籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

するとフロアに聞き覚えのある声が響いた。

「おはようございます。今日もよろしくお願いします」
「おはようございます」

皆の視線が私の後方に注がれる中、私の視線も背後に移る。そこには今朝キスをしてきた張本人である和穂さんがいた。

どうやら毎朝コーポレート部に挨拶に来るようだ。
爽やかながらも張りのある声に自信が滲んでいる。女性社員の目が輝くのを見た。

やっぱり彼はモテるのだと再確認した瞬間だった。
和穂さんは挨拶を終えるとすぐに専務室に戻るのかと思いきや、どういうわけか私の方に向かってくる。
狼狽しないように唇をきつく結ぶ。

「おはよう。今日からよろしく」
「…はい。よろしくお願いいたします」

軽く頭を下げると、意味深な目線を送られてから彼は去っていく。
胸を撫でおろして正面に向き直った。

「…はぁ、」

誰にも聞こえないようにそっと息を溢した。
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