籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
…―…


昼食はコンビニで適当に買ってきたおにぎりを食べながらデスクで仕事をしていた。

事務業務だと思っていたがただのそれとは違い結構大変だった。
特にスケジュール管理だ。
専務のスケジュールを秘書は共有できるようになっているが、それが15分刻みで予定が入っている週もあった。

土浦さんは午前中から和穂さんに掛かってくる電話を何度も彼に繋ぎながら出張先のホテルの手配やメールの返信など同じ人間とは思えないほどに早いスピードでそれらをこなしていた。

 社長や専務、役員などは毎日暇なのだと思っていたがそうでもないようだ。
秘書は優秀でなければならないのも頷ける。
午後の始業時間開始の音楽がビルに流れる。土浦さんがデスクに戻ってくると

「そうだ、専務が午後に専務室に来てほしいって言ってた。来週の出張の件だと思うけど」
「しゅ、出張?!」

サラッとそう伝えてくるが出張というワードに声を荒げた。

「来週常盤専務は出張で北海道に行くから。それはスケジュール把握してあるとは思うけどそれに同行するのは佐伯さんになった」
「…私?ですか?土浦さんは?」
「海外出張でもないし北海道支社くらいならば別に佐伯さんでも構わないでしょう。俺は再来月の海外出張に同行するのでよろしくお願いします」
「はい…」

秘書として出張に同行するのは当たり前だが部署異動があったばかりだからそれはもっと先になるかと思っていた。それが来週に迫っている。
土浦さんと会話をしてから専務室へ向かった。
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