籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
恐らくそれのことなのではと思った。それを断って私に見合い話を持ち掛けてきたということは…―。
(少しは好意があるっていうこと?それとも、ただの興味?)
綺麗なあの吸い込まれそうな黒曜石の瞳を思い出し一人首を横に振った。
そんなことはどうだっていい、今は仕事に集中だ。
―昼休み
久しぶりでもないが夏子と一緒に昼食を食べようと彼女に会社用のチャットから連絡した。
すると今日はテレワークだから会社にいないと返事が来る。
落胆しつつも財布を片手に立ち上がる。
「佐伯さんは今日は社食?」
「そうです。土浦さんも?」
「そう、一緒に食べる?」
「あー、そうですね。親交を深めるという意味でも」
土浦さんは業務中はほぼ笑わないし能面のような顔は怖いとすら感じるがそれでも休憩や業務時間外になると少しだけ私たちの間にある壁を薄くしてくれているようで喋りやすくなる。