籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
 二人で一緒に社食に向かっていると藤沢千佳の声が聞こえた気がした。

嫌な予感がしたが、それは的中しちょうどエレベーター前に到着すると藤沢千佳と同じ部署の女性社員が雑談をしている。
すぐに背後にいる私たちに気が付きにっこり可愛らしく笑うと

「お疲れ様です」
という。

 顔には出さないようにしているが最近よく和穂さんから顔に出やすいといわれているから今の自分は大丈夫かどうか気になる。鏡で確認したいくらいだ。


 総務課の女性陣と一緒にエレベーターに乗る。
絶対に声を掛けてほしくない、とは思っているがこういう時に話しかけてくるのが藤沢千佳だ。

 綺麗に内にワンカールしたボブヘアがふわり空気を纏って女性らしいいい香りが鼻孔を擽る。

後方にいる私たちに体を向けると、
「あれ?一緒にいるのがご結婚される方ですか?」
と、薄くグロスが塗られた唇の端を上げ言った。

「違います!彼は同じ部署の、」
「ええ~違うんですか?じゃあ誰なんだろ~教えてくれないんですか」
「…」

 ふふ、と最後に私から見るとぶりっ子にしか見えない声を出して総務部の社員たちは藤沢千佳と一緒に途中の階で降りていく。

土浦さんと二人っきりになり気まずい空気が漂う。
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