籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

二人で社食を出る。
口火を切ったのは土浦さんだった。

「もしかして成瀬さんが元カレ?」
「そうです…はぁ、それで浮気相手がエレベーターで出会った藤沢千佳です」
「へぇ、職場恋愛でドロドロしてるんだ。やっぱり俺は絶対恋愛したくないって思ったね。面倒だ」
「はは、そうですね…職場は…」

 吐き捨てるように言った土浦さんに彼女が出来ることはこの先ないかもしれないと思いつつ秘書課のフロアに向かった。


…―…


 今日は定時で会社を出た。
和穂さんはまだ会社に残っている。今日は19時から会食がある。

 第一秘書である土浦さんも一緒に出席するらしい。

仕事上の付き合いでの飲み会など私はストレスでしかないがそれを結構な頻度でこなす上の人たちは凄いと素直に関心する。

ヒールを鳴らし帰宅ラッシュの人の波にのまれそうになりながら鞄の内ポケットから着信音が聞こえた。


すぐに確認すると夏子からだった。

「もしもし?今日もう終わり?」
「夏子?うん、さっき終わった、どうかした?」
「旦那がいるのに悪いけど今日飲まない?」
「いいよ!ちょうど今日和穂さんいないの」
「へぇ、飲み会でも?」
「そんなところ」


 夏子からの飲みに行こうという誘い電話に声が弾む。
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