籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】

一番気楽に飲める相手は夏子だろう。そこまで友人も多くはないし、社会人になってからもそれなりに飲み会に誘われたりはするが心から楽しんで飲める友人は夏子だけだ。

 疲れも吹っ飛び、私は軽い足取りで居酒屋に向かった。
会社近くの大衆居酒屋に到着すると既に夏子がいた。どうやら今日はフレックスで早めに退勤したらしい。
かつ、テレワークということもあり終わってすぐに飲みに来たんだとか。


 既に軽く酔っている彼女の目の前に座った。
若い店員に生ビールを注文した。

「どうしたの?平日なのに」
「どうもこうもないよ!飲みたかったの!」

 私の関わってきた人たちの中で見た目と中身のギャップナンバー1だと改めて思った。
何も喋らないでにっこり微笑んで座っていたら見た目的には藤沢千佳と同類だ。

 そんな彼女はビールの注がれたジョッキを片手に一気に喉に流し込むとそれを持ったまま顔を上げる。

「はぁ~うまい~」
「久しぶりに夏子と飲める嬉しい」
「私も~あ、枝豆と唐揚げは頼んでるんだけど、他にも頼んで」
「うん、じゃあ…肉豆腐かな~」

 ちょうど私の注文したビールが運ばれてきたため乾杯をした。
空腹も相俟ってアルコールが全身を巡るのがわかる。
すぐに酔いそうだなと思った。
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