籠の中の鳥は今宵も熱い寵愛を受ける【完結】
―10分後
和穂さんから近くに車を停めていると連絡があった。
夏子を支えながらビルを出ると目の前に黒塗りの高級車が停まっている。
運転手もこんな遅くまで大変だな、と思いながら夏子と一緒に後部座席に乗り込む。
「和穂さん、ありがとうございます」
「いいんだ。それよりも友人の住所はわかってる?」
「もちろんです。夏子!大丈夫?」
先ほどまで潰れていたのにむくっと顔を上げる夏子は呂律の回らない口で喋りだす。
「もしかして!常盤専務ですよねぇ」
「そうです。こんばんは」
「はぁ、ナニコレ、いい男過ぎるじゃん~嬉しいよ~はすみ!さっそく藤沢千佳にマウント取りに行こうぜ」
「ねぇ、酔ってるでしょ。言ってること支離滅裂だよ」
それからずっと夏子は自宅に到着するまで意味不明なことを口にしていた。
私も酔っていたはずが彼女の介抱で完全に酔いが醒めた。
彼女のマンション前に止まると私は夏子を支えながら車を出る。
が、最後に何を思ったのか夏子は和穂さんに向かって
「知ってます?はすみめちゃくちゃモテるんですよ」
「っ」
「彼女鈍感なので縛っておかないとすぐに逃げますよ」
「…」
「ちょっと夏子!何いってるの!」
いい加減なことを言う夏子を無理やり車から降ろして彼女のマンションに向かった。