珈琲と花の香りの君
平日の、朝イチの水族館は空いていて、
珠利ちゃんと手をつないだまま、ゆっくり歩いた。
ナポレオンフイッシュやディスカスがゆったり泳いでいて、照明を落とした水族館はまるで、海の中にいるみたいだ。
「水族館って、なんだかいいね。落ち着く。」
ぽつりと呟けば、
「あたしも今、同じこと考えてたの。」
俺を見上げて、珠利ちゃんが笑ってくれた。
表示に従って、暗く長いエスカレーターに乗った。
エスカレーターを手を繋いで降りるとそこには―