悲しき恋のエトセトラ

　この日、僕は何気なくＳＮＳを開いた。普段なら滅多にそんことをしないはず。それはまるで何かに導かれるようであった。その目に止まったのは一人の女性。どこか放って置けない、それが僕の第一印象だった。


　彼女の名は麻里奈。本物の女性である。同じグループに入ると急速に距離を縮め始めた。不思議と話しが合い、僕は次第に彼女に惹かれていってしまう。心を惑わすような美声に、少しおっちょこちょいなところ。それが彼女の魅力であった。


　傷つきやすい性格でもあり、ちょっとした言葉で凹んでいるのがよく分かる。そんなとき、いつも僕は優しく彼女に声をかけたのだ。


「そんなこと、気にする必要ないよ。もし、気にするようなら、それを言わないように話しておくからさ」
「ありがと。瑛二君って……優しいよね」


　このときの僕は彼女に恋愛感情なんてなかった。単に傷つく姿を見たくない。それだけ……。人を傷つけるなら、自分が傷ついた方がいい。それが僕の考えなのだ。


　彼女とは数ヶ月という年月を同じグループですごしていた。ネットという世界……それは突然いなくなる人や、リアルの事情で去る人など色々である。


　それはある日突然訪れる。彼女がそのグループから姿を消していた。理由などまったく分からない。僕はあとを追うようにそのグループを抜けたのだ。


　個別メールで彼女と連絡を取ってみる。すると、彼女から返事があり、自分でグループを立ち上げたと。まるで吸い込まれるように、僕は彼女のグループに入ったのだ。


「麻里奈さん、どうしてあのグループを抜けたの？　急にいなくなったからビックリしたよ」
「うん、ごめんね。だって、個別メールで『お前には無理だから諦めな』って言われて……。それでかなしくなってしまったの」
「そう、だったんだ」
「でもね、追いかけてくれてありがと。ホントに嬉しかったんだよ」


　こうして僕は彼女と再会を果たした。二人だけのグループ。僕と彼女だけの特別なグループ……。彼女との関係が大きく変わったのは、僕が休みを利用してリフレッシュしたときだった。


「休みなんて羨ましいよ〜。でも、誰と出かけてるのっ？　どうせ彼女と一緒なんでしょ！」


　少し怒っていると僕は感じていた。理由に心当たりなどあるわけがない。もしかして……嫉妬でもしているのか。そんなことまで考えるようになっていた。


「彼女なんていないよ、単にひとりで、ぶらりとリフレッシュしてるだけだからね」