秘密と家族
「琉梨、おはよ」
「ん…琉雨…」
琉雨の腕の中でもぞもぞと動いて、抱きつく琉梨。

「ん?琉梨?」
「琉雨…好き……」
「うん、俺も」
琉梨の髪の毛をすくように、撫でる琉雨。

「今、何時?」
「んー、10時…かな?」
「10時…10時!!?
起きなきゃ!!」
バッと顔を上げる、琉梨。

「ん?なんで?」
「ご飯、用意しなきゃ!!琉雨、お仕事遅れちゃう!」
「今日は仕事休みだから、大丈夫だよ」
「え?でも、今日は金曜日だよ?
金曜日は一番忙しいんでしょ?」
「昨日寂しい思いさせたから、今日は琉梨といる」
「うん、ありがとう!」
琉雨を見上げて、微笑む琉雨。

「………って…嘘…」
「え……」

「俺が琉梨といたいから、今日は休み」
そう言って、額にキスをした琉雨。
「いいの?」
「うん、だから今日は二人でゆっくりしよ?」
「フフ……」
笑い出す、琉梨。

「ん?」
「幸せだなって!
だから、笑いが出てくる!
フフフ……!!」
「琉梨、笑いすぎ!!」
「だってぇー!」
二人はしばらくベッドの上で、微笑み合っていた。

「あ、琉雨」
「ん?」
「相談があるんだけど…」
バルコニーで煙草を吸っている琉雨の腰の辺りにしがみついていた、琉梨。
琉雨を見上げて言った。

「何?」
「パートしたいなって、思って……」
「パート?」
「うん。舞子のイタ飯さんなんだけど…」
「パートか…琉梨が決めたことなら反対なんかしないけど、俺の気持ち言っていい?」
「うん」
「仕事、してほしくない」
「え?どうして?」

「だって琉梨が俺以外の男と、俺の知らないとこで一緒に過ごすだろ?嫉妬で狂うから」
煙草を灰皿に潰し、琉梨の頬を包み込み言った。

「琉雨…」
「でも琉梨がしたいって言うなら、応援するよ」
「じゃあ…短時間だけにする。
あくまでも、琉雨のいない時だけ。やっぱ、琉雨のいない日中は寂しいから……」
「うん、わかった」

その日、琉梨は早速舞子に連絡してみる。
『OK!店長に話すね!』
「あ、でも!できる限り、琉雨の予定に合わせたい!」
『わかってるわよ!例えば、琉雨の仕事日の夕方とかは?結構、夕方は忙しいから』
「それなら!」
『ん!私、今から勤務だから話しとく!また連絡するね!』
「ありがとう!」


そして、一方の琉雨も━━━━━━━
『━━━━━へぇー、琉梨がパートねぇ…
了解!そのイタ飯屋は、俺の街の店だからな。オーナーにもきつく言っておく。
あと、俺の部下を護衛に働かせようか?もちろん、琉梨には内緒で』
「うん、頼むよ」

独占欲の強い琉雨が、素直に受け入れるわけないのだ。
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