秘密と家族

｢無理矢理なんかするか！
まぁ、カマはかけたけど……！
琉梨は純粋だからな｣

｢なんでそんなこと……お前はそうやっていつも、琉梨を傷つけるだな｣
華秀が顔を歪ませ、秀彦を睨みつけた。

｢お前！？誰に向かってそんな……｣
｢お兄様に向かってですが、何か？｣
二人の雰囲気が、どんどん悪くなっていく。
部屋も闇に落ちたように、圧迫されていく。

｢二人とも、やめろよ。
ここは、外だよ｣
琉雨は、あくまで冷静に鋭く尖ったように言う。

｢琉雨…｣
｢あ、悪い、琉雨｣
そんな琉雨に、二人は少し落ち着きを取り戻す。

そこに雨里が現れる。
｢琉梨ちゃん、泣いてるわよ！貴方達のせいで(・・・)！！
秀彦、戻って！！
琉雨も！琉梨ちゃんを連れて帰りな！
華秀、ここは退いて！｣

三人は黙って、頷いた。

｢琉梨ちゃんを、これ以上…悲しませたくないでしょ？｣
サバサバした性格の雨里。
的確に三人に告げ、秀彦を引っ張り部屋を出た。

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｢琉梨、大丈夫。琉梨は悪くないよ｣
自宅に帰り、ソファで琉雨に抱き締められている、琉梨。
ずっと琉雨が、背中を撫でている。

｢また…拗れちゃったよね……華秀くんと秀パパ｣
｢もう拗れすぎて、拗れようがないよ｣
｢え？何、それ？｣
ゆっくり顔を上げて琉雨を見る、琉梨。

｢二人は、俺達が生まれる前から既に拗れてる。
華秀が今、38だから……30年以上は拗れてる。
だからね。
今更、関係修復は無理だ｣

｢そんな……｣
｢ずっと……二人はお互いを傷つけ合って生きてきた。
だから、無理なんだ。
傷つけ合うことでしか、二人は関われない｣

｢琉雨は、二人に仲良くしてほしいって思わないの？｣
｢わからない。
俺は、華秀が好きだ。
それに、華秀には沢山助けられた。
だから親父がどんなに反対しても、華秀とはずっと仲良くしていきたい。
だからって、親父を捨てることもできない。
勝手かもだけど、俺はこのままでも構わないと思ってる。華秀は、それもちゃんとわかってくれてる｣

｢そう…
兄弟って、難しいね……｣
琉梨は目を伏せ、呟くように言った。

｢そうだね。俺達は一人っ子同士だからわからないけど、きっと兄弟にしかわからない何かがあるんだと思うよ｣
｢うん…｣

その日の夜更け。
琉梨は眠れずに一人、バルコニーにいた。

夜の冷たすぎる風が、琉梨に沁み渡る。

【俺達はお互い“何があっても”わかり合えない】
【華秀を一生受け入れられない】
【傷つけ合うことでしか、二人は関われない】

華秀、秀彦、琉雨の言葉に、琉梨は心を締め付けられていた。