秘密と家族
『わかった。今から向かうから』
「うん。ごめん、梨央ママ。俺がついてて…」
『何言ってるの?琉雨くんは悪くないでしょ?
とりあえず、私が着いたら病院に連れて行きましょう』
「わかった」

琉梨は身体が弱い為、一度風邪を引くとかなり長引く。
その上、いつも肺炎の心配をしなければならない。

なので風邪を引いた時は、梨央の呼ぶのが通例のようになっている。


「琉梨は?」
「まだ寝てる」
それから一時間程で、梨央が来て一度ベッドルームに向かう。
琉梨の頬を数回撫でる、梨央。

「病院、行こう」
「うん」
琉雨が琉梨を抱きかかえる。
梨央が荷物を持って、玄関を出た。

後部座席に琉梨を乗せ、梨央が自身の膝の上に琉梨の頭をゆっくり乗せた。
琉雨が運転席に乗り込み、ゆっくり発車した。

とても大袈裟だが、琉梨は風邪を引くと全く動けなくなるのだ。



「今のところ、肺炎にはなってません。
しかし、十分注意してください」
「はい」
「どうしますか?ご心配なら、入院処置をしますが……」
「琉雨くん、どうする?」

「俺が看る」
「わかった。先生、連れて帰ります」
「わかりました。しかし、何かあったらすぐに連れてくるように!」
「はい、わかりました」


自宅に着き、梨央がコーヒーを入れる。
ベッドルームをノックして、琉雨に声をかける。

「琉雨くん、コーヒー入れたから飲んで?
それに、あんまり琉梨のとこにいるとうつるわよ!」
「うん。でも、できる限り離れたくない。
それに、俺にうつれば琉梨はもっと楽になる」

「……ったく、相変わらず…賢い琉雨くんとは思えない発言ね!」
梨央は苦笑いして言った。


リビングで琉雨と梨央が、コーヒーを飲んでいる。
「お昼ごはん、何か作ろうか?
琉雨くん、何も食べてないでしょ?」
「うん。ごめん、俺の家なのに……」
「ううん」

基本的に琉雨は琉梨から離れず、献身的に琉梨の世話をする。
服を着替えさせ、トイレに抱えて連れていき、お粥を食べさせる。
梨央が声をかけないと、水分も取らないくらいに。

「琉雨…」
「ん?どうした?水?それとも、トイレ?」
「うつるから、お部屋出てて…」
「やだよ。ここにいる。
それに、俺にうつしなよ。
そうすれば、琉梨か楽になる」

「琉雨…夜ご飯食べた?」
「まだ」
「じゃあ、食べてきて…」
「いらない。ここにいる」
「ダメ…余計に、うつったら大変…
ここにいてくれるなら、ちゃんとご飯食べて休んで?」

「…………わかった」

琉雨が部屋を出たのを確認して、琉梨は再び目を瞑り眠りについた。
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