秘密と家族
「じゃあ…何かあったらすぐに連絡して」
「えぇ…でも、だいぶ落ち着いてきたから大丈夫よ」
「うん。でもそう言って、前は肺炎になったことがあるよ」
「そうね」

「……………やっぱ、琉梨の傍にいようかな」
琉雨は少し考え込み、言い放った。

「ダメよ!仕事はきちんとする。
約束でしょ?」
しかし梨央に一喝されたのだった。


あれから一週間程して、やっと落ち着いてきた頃。
梨央はずっと泊まり、琉雨のいない日中を看病していた。

琉梨の看病と別に、琉雨を説得し仕事に送り出すのも梨央の仕事のようなものだ。

琉雨は、琉梨が体調を崩すと必ずといっていいほど、仕事を休むと言って聞かないからだ。
学生の頃も、琉梨が体調を崩すと真藤家に泊まり込み、学校まで休んで琉梨の看病をしていた。

なので結婚する時、一誠達四人は琉雨に約束をさせたのだ。
琉梨が体調を崩したら、梨央を呼ぶこと、仕事を休まず自分自身のことも大切にすること。

琉雨が出ていき、琉梨の元へ行く。
寝息が穏やかだ。
梨央は安心したように、ホッと息を吐いてリビングに戻った。


数時間後、琉梨の様子を看にいく。
「はぁはぁ…ママ…」
「琉梨!!?」
「苦…し……ママ…」

「琉梨!!待ってて!」
すぐに琉雨に電話をしようとして手が止まる。
きっと琉雨のことだ。
仕事なんかほったらかしにして、飛んでくるだろう。

梨央は一誠に電話をかける。
が、繋がらない。
秀彦にもかけるが、繋がらない。

あと、琉梨を抱えられる男性……

「………」

梨央はある人物に電話をかけた。

インターフォンが鳴り、梨央が応対する。

「久しぶり!“梨央”」

「“華秀”」
「まさか、梨央が俺を頼ってくれるなんてな!
琉梨は?」

「琉梨の為よ。
肺炎になってるかもしれない。
とにかく、病院に連れていく」
「ん。わかった」

華秀がベッドルームへ行き、琉梨を抱える。
「かなり、酷いな。急ごう」


病院に向かう途中の車内━━━━━━━
「元気にしてた?」
華秀が運転席から声をかける。

「えぇ…元気よ」
「良かった」
「今は、何してるの?」

「うーん…内緒!」
「何、それ」
「梨央は、相変わらず綺麗だね!」

「梨央って呼ばないで!」
「いいじゃん!愛し合った中なんだから!」

「冗談はやめて!!!」

思わず声を荒らげた、梨央。

「ちょっ…琉梨がいるんだぞ!!」
「……………それ、琉梨にだけは言わないで!」

「わかってるよ。琉雨と琉梨には、一生言わない。
でもさぁ……」
「何?」


「琉梨は一誠の娘なんだよな……?」

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