秘密と家族
「は?」
「ずっと考えてた。
琉梨は、俺の子じゃないかって……!」

「じ、冗談やめてよ……!」
梨央が視線をそらし、前髪に触れた。

「………マジかよ…!!?」
華秀が、珍しく動揺している。

「は?琉梨は、私と一誠の子よ!!」

「梨央」
「な、何?」

「お前の嘘つく時の癖、教えてやろうか?」
赤信号で車が止まり、バックミラー越しに華秀が鋭く梨央を見据えた。

「梨央は嘘つく時、前髪に触れながら俺から目線を外すんだ。
━━━━━━今、やったみたいに……」

「━━━━━!!!!?」
梨央は目を見開き、華秀を見た。

「この事、一誠は知ってんの?」
ため息混じりに、華秀が言った。

「………」
「梨央!!!」

「知らないわ。
でも………」
「でも?」
「秀彦さんと雨里ちゃんは、知ってる……」

「それでか!秀彦が俺を嫌悪するの」

「……………そうよ。華秀が琉梨を襲った子達を殺してしまった事はもちろん赦されないことよ。
華秀がいなかったら……琉梨と琉雨くんは死んでたかもしれない。
…………でも本当の秀彦さんの絶縁原因は━━━━━」

「俺が梨央を無理矢理犯して、妊娠させたから?」

「えぇ…
誰にも言うつもりなかった。
一生……誰にも……
でもたまたま、秀彦さんと雨里ちゃんには知られてしまったの。それが、華秀の事件の時と重なったの。
一誠は、華秀が私を乱暴したってことしか知らない。
まさか、琉梨がその時の子だなんて……
………………いや、違うわね。
華秀は、私を乱暴なんかしてない。
あの時……私は、華秀を受け入れたんだから。
だから、おろすなんて出来なかった」

「いや、俺がガキだったんだ。
とにかく、梨央のことが好きで、好きで、好き過ぎて………もう、止められなかった。
一誠と結婚するなんて言い出して、もう…めちゃくちゃにしてやろうと思ったんだ」

「ねぇ、華秀」
「ん?」
「私は、一誠を愛してる」
「うん、知ってるよ」

「でも、華秀に抱かれたあの時のこと……」

「うん」

「後悔はしてない」

「うん」

「琉梨を産んだことも、一誠と結婚したことも」

「うん」

「勝手だってわかってる。
最低だって……!一誠と琉梨を裏切ってることも。
でも、お願い……!」

「梨央?」

「琉梨にだけは、言わないで!
この子だけには……琉梨は私の大切な娘なの。
私の事、恨んで構わない。
最低だって、罵ってもいい。
琉梨を傷つけるのだけは、やめて!
お願い………!」
梨央は華秀を見て、力強く言った。


「わかってるよ。
俺だって、琉梨は俺の宝物だから!
傷つけることなんて、しない!
誓って……!」

華秀も、梨央に振り返り力強く言った。
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