秘密と家族
「ご、ごめん!!」
琉梨の言動に崚汰はハッとし、慌てて琉梨を離す。
「あの、もう…ここで!送ってくれてありがとうございました」
琉梨は頭を下げ、マンションまで駆けていったのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━
「はぁ、はぁ……」
マンションのエントランスホールにあるソファに、へたりこむように腰かけた琉梨。
スマホを取りだし、琉雨に電話しようとする。
通話ボタンを押そうとして、手が止まった。
【いい加減、琉雨離れしたら?】
不意に、舞子の言葉が蘇った。
「琉雨…早く、帰ってきて……」
琉梨は項垂れるようにエレベーターに乗り込み、自宅へ戻ったのだった。
一方の、琉雨━━━━━━━━━
「琉雨、待たせたな」
華秀が来店してきて、入口で出迎える琉雨。
「うん、奥の個室だよ。先方、待ちくたびれてるみたい」
「そう…了解」
軽く手を上げ、華秀は奥へ進んだ。
個室のドアを琉雨が開け、華秀が中へ入る。
「若、お待ちしてました!」
「悪い、遅くなった」
「いえ……これが、例の組織の情報です」
「━━━━━━へぇー、テレビではあんなこと言っておいて、こんな汚ねぇことしてんだな…!
おい、湊川!」
華秀の部下・湊川を呼ぶ。
湊川が、スーツケースを相手に差し出す。
中身は、札束だ。
「確かに、いただきました!」
中身を確認した、男。
そして、個室を出ていった。
「腹減った!湊川、琉雨を呼んで!」
「はい」
「華秀、もう遅いから…軽くにしたよ」
「ん。さすがだな!ありがと!
琉雨も、飲めよ!もう、営業時間外だろ?」
「うん」
酒を飲みながら、ゆっくり食事をする。
「琉梨は?元気にしてる?」
「うん、華秀によろしくだって」
「そっか!久しぶりに会いてぇな…!久しぶりに、三人で飯食うか!」
「うん」
「琉梨の好きな……寿司!」
「うん」
「でも、ここにも寿司あるな。ここでもいいか!」
「うん」
心ここにあらずな様子の、琉雨。
「琉雨」
「うん」
「………」
「………」
「琉梨、ちょうだい」
「うん」
「…………いいの?」
「うん」
「じゃあ、今から拐いに行く」
「うん…………ん?今、何て……!?」
そこで、華秀に向き直る琉雨。
「俺の話、聞いてねぇな!」
「ごめん…久しぶりに、こんな遅くに琉梨を家に一人にしてるから、気になって……」
「だったら、連れてくりぁ良かっただろ?」
「は?それはダメ!」
華秀を睨みつける、琉雨。
「なんで?もちろん、仕事は見せねぇよ?」
テーブルに頬杖をつき、真っ直ぐ琉雨を見返す。
「こんな汚ない世界、見せたくない。
この店は、汚ないから」
「………そうだな…」
二人はお互い目を反らさず、個室内が張り詰めた空気に圧迫されていった。
琉梨の言動に崚汰はハッとし、慌てて琉梨を離す。
「あの、もう…ここで!送ってくれてありがとうございました」
琉梨は頭を下げ、マンションまで駆けていったのだった。
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「はぁ、はぁ……」
マンションのエントランスホールにあるソファに、へたりこむように腰かけた琉梨。
スマホを取りだし、琉雨に電話しようとする。
通話ボタンを押そうとして、手が止まった。
【いい加減、琉雨離れしたら?】
不意に、舞子の言葉が蘇った。
「琉雨…早く、帰ってきて……」
琉梨は項垂れるようにエレベーターに乗り込み、自宅へ戻ったのだった。
一方の、琉雨━━━━━━━━━
「琉雨、待たせたな」
華秀が来店してきて、入口で出迎える琉雨。
「うん、奥の個室だよ。先方、待ちくたびれてるみたい」
「そう…了解」
軽く手を上げ、華秀は奥へ進んだ。
個室のドアを琉雨が開け、華秀が中へ入る。
「若、お待ちしてました!」
「悪い、遅くなった」
「いえ……これが、例の組織の情報です」
「━━━━━━へぇー、テレビではあんなこと言っておいて、こんな汚ねぇことしてんだな…!
おい、湊川!」
華秀の部下・湊川を呼ぶ。
湊川が、スーツケースを相手に差し出す。
中身は、札束だ。
「確かに、いただきました!」
中身を確認した、男。
そして、個室を出ていった。
「腹減った!湊川、琉雨を呼んで!」
「はい」
「華秀、もう遅いから…軽くにしたよ」
「ん。さすがだな!ありがと!
琉雨も、飲めよ!もう、営業時間外だろ?」
「うん」
酒を飲みながら、ゆっくり食事をする。
「琉梨は?元気にしてる?」
「うん、華秀によろしくだって」
「そっか!久しぶりに会いてぇな…!久しぶりに、三人で飯食うか!」
「うん」
「琉梨の好きな……寿司!」
「うん」
「でも、ここにも寿司あるな。ここでもいいか!」
「うん」
心ここにあらずな様子の、琉雨。
「琉雨」
「うん」
「………」
「………」
「琉梨、ちょうだい」
「うん」
「…………いいの?」
「うん」
「じゃあ、今から拐いに行く」
「うん…………ん?今、何て……!?」
そこで、華秀に向き直る琉雨。
「俺の話、聞いてねぇな!」
「ごめん…久しぶりに、こんな遅くに琉梨を家に一人にしてるから、気になって……」
「だったら、連れてくりぁ良かっただろ?」
「は?それはダメ!」
華秀を睨みつける、琉雨。
「なんで?もちろん、仕事は見せねぇよ?」
テーブルに頬杖をつき、真っ直ぐ琉雨を見返す。
「こんな汚ない世界、見せたくない。
この店は、汚ないから」
「………そうだな…」
二人はお互い目を反らさず、個室内が張り詰めた空気に圧迫されていった。