秘密と家族
「可愛い…琉梨……
なんで、こんな可愛いの?
可愛い上に、俺のトレーナー着るなんて可愛いことしないで?」
琉梨を組み敷き、頬をなぞる。

「ごめん…」
「怒ってないって!
ただ、煽られて大変ってだけ」
そして、そのまま手を身体に滑らせた。

「寂しくて、不安だったの……」
「琉梨…?」
「琉雨の匂いがするトレーナー着たら、琉雨に抱っこされてるみたいで幸せで……」
「うん」
「琉雨」
「ん?」

「私、琉雨がいないと生きていけない」

「琉…梨…?どうしたの?」
「舞子にね、言われたの。
“琉雨離れしな”って。でも……無理なの。琉雨がいないと……」
琉梨の綺麗な目から、涙が出てくる。

琉雨は目元にキスをして、目を覗き込んだ。
「俺は、琉梨から放れないよ」
「え?」
「俺“が!”琉梨から放れない」
「琉雨…」

「いいんだよ?俺なしでは生きれなくなっても。
てか、俺なしでは生きれなくなって?
もっと、依存して?」
「いいの?」
「うん。その方が、俺は安心する。
大丈夫。俺も、琉梨がいないと生きていけないから…………」

琉梨の口唇を奪うように重ねる。
「ンンン…琉…雨…好、き……」
「俺も…好きだよ……
琉梨…柔らかい……甘い匂いがする……」

【くそっ…何これ…柔らくて…甘い匂いがする……】

「━━━━━━やめて…」
「琉梨…?」
「お願……やめて…!」
「琉梨、どうしたの?」

「はぁ、はぁ…崚汰くんと、重なって……」

「は━━━?
誰、それ……」

「え━━━━?あ…えーと……」
琉梨は“あ、ヤバい…”と思う。
つい崚汰の事が口から出てしまい、琉梨は目を泳がせた。

「琉梨!!」
「え……琉…雨……」
「誰だよ!!?
琉梨のコートにへばりついてた奴?」
「え……!?」
いつになく、鋭い言葉と声のトーン。

「俺のモノじゃない、香水と煙草。
琉梨のコートにへばりついてた」
「誠史…くんの……お友達……」
琉雨の恐ろしい表情と声に、震えながら答える琉梨。

「へぇー、崚汰くんって言ってたな。
どんな奴?」
「どんなって…」
「吐き気がする。
あの臭い、琉梨の口から俺以外の名前が出ることも………」

「ごめんなさい…琉雨、ごめんなさい……」
止まっていた涙が更に溢れてくる。

「あ……琉梨、ごめん…そんな顔させたいんじゃなくて…嫉妬して、つい…」
琉梨の姿に狼狽える、琉雨。
そして琉梨の額に自分の額をくっつけた。

穏やかでいたいのに、つい嫉妬でぶつけるように責めてしまった。

「帰りに、危ないからって送ってくれたの。その時に……その……」
「もういいよ。
ごめんね、琉梨。もう大丈夫だから。
それよりも、抱かせて?」
琉雨は、琉梨を安心させるように微笑んで言った。

「うん…」

二人は、お互い愛情を確かめるように抱き合ったのだった。
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