【完結】余計な愛はいらない。


「野瀬……さん」

「颯人でいい」

 そう言いながら、野瀬さんはあっという間にトーストを食べ終えてしまった。

「杏実は、もう一枚食べるか?」

「い、いえ。一枚で大丈夫です」

 朝からそんなに食べられない……。

「……で話は変わるけど、玲音のこと、まだ好きなのか?」

「い……いえ。そんな訳、ないです」

 だってもうあれから一ヶ月以上経つし……。もう玲音とは関係ないもの。

「そうか。……寝言で名前呼んでたから、てっきりまだ好きなのかと思ってた」

「そんな……。玲音とはもう、関係ないです」

 玲音には家庭がある。奥さんもいるし、子供もいるんだから。
 玲音は今頃、きっと幸せに暮らしているはずだ。

「……杏実、玲音と俺、どっちが良かった?」

「え!?」

 ど、どっちが良かったって……! なんでそんなこと聞くの……!?

「セックスだよ。玲音と俺と、どっちが気持ち良かった?」

「そ、そ、そんなの分かりません……!」

 は、恥ずかしいんだけど……!!

「そうか。 じゃあ俺ってことにしとくわ」

「えっ、え……!?」

 な、な、なんでそんなこと……!
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