【完結】余計な愛はいらない。
新しい恋✕再会
「俺たち、相性いいと思わない?」
「……はい?」
そしてその日の朝、そう聞かれたことをわたしはきっと忘れないだろう。
「なあ、杏実」
名前が呼ばれて視線を向けると、わたしの頬に手を添えた野瀬さんがいた。
「……野瀬、さん?」
「杏実、俺と付き合ってみない?」
「……え?」
野瀬さん、今、なんて……?
「俺、もっと杏実のこと知りたくなった。体だけじゃなくて、杏実の心も全部、知りたくなった」
体だけじゃなくて、心も全部……。それはわたしが、玲音に求めていた答えだった。
それを今、野瀬さんが言葉にして言ってくれた。
わたしはそれを聞いて、一瞬だけ。一瞬だけだけど……。
野瀬さんのことを求めてしまいそうになった。
「……野瀬さん、あの」
「杏実、玲音ってどんな男だった?」
その答えを出そうとした時、野瀬さんの言葉にわたしはさらに困惑した。
「……どんなって?」
「優しかった? それとも、優しくなかった?」
「……分からない」
わたしはそう答えるしかなかった。
「玲音は……既婚者だったの」
「……え?」