【完結】余計な愛はいらない。
そう言ったわたしに、野瀬さんは不思議そうな表情を見せた。
「玲音は既婚者で、奥さんも子供もいる人でした。……わたしたちはセフレ、だったんです。会うのはいつも平日で、夜仕事が終わるとホテルで合流して、いつもセックスしてました。……でも、本当にそれだけなんです。それしか、わたしにはなかったんです」
「……杏実、泣くな」
わたしの瞳から流れた涙を、野瀬さんは優しく拭ってくれた。
「わたしは、玲音のこと本当に好きでした。でも玲音には奥さんがいるから、わたしはただセフレとしてしか愛されなかった。……心まで全部、愛されたかったのに」
わたしの言葉なんて所詮、ただのわがままでしかない。……でもわたしが話す言葉を、彼は黙って聞いてくれていた。
「……わたしはただ、愛してほしかった。セフレとしてじゃなくて、一人の女として愛してほしかった。……それって、イケないことですか?」
「イケないことじゃない。むしろそれが当たり前のことだろ?……杏実にそんなことを思わせるなんて、そんなの玲音が悪いに決まってる」
そう言ってくれた野瀬さんは、わたしを優しく抱きしめてくれた。