【完結】余計な愛はいらない。


「杏実はすぐそうやって焦らすんだよなあ。な?杏実」

「ええ?焦らしてません」

 こうやって子供みたいに拗ねてみる所も、最高に愛おしいと思ってる。
 わたし、野瀬さんとあの時出会えて本当に良かった。

「杏実は時々、意地悪なんだよな」

「ええ?意地悪なのは、野瀬さんでしょ?」

 野瀬さんはいつもベッドの中で、すごく意地悪するし……。もちろん大切に優しく抱いてくれる時もあるけど、最後の方はすごく激しくしてくる。

「でもそんな杏実が、俺は好きだよ」
 
「……ありがとう、野瀬さん」

 そんな会話をしていた、その時だった。

「杏実……?」

 と誰かに声をかけられた。声のする方に視線を向けてみるとーーー。

「……玲音?」

 そこにいたのは、スーツ姿で歩く玲音の姿であった。 仕事終わりなのか、少し疲れた顔をしているようにも見える。

「玲音?……お前が玲音か?」

 玲音に気付いて先に声をかけたのは、野瀬さんの方だった。

「……杏実、彼氏か?」

「う、うん……」

 なんでこんな時に出会ってしまうのだろう……。
 一番会いたくない人にーーー。
< 35 / 59 >

この作品をシェア

pagetop