【完結】余計な愛はいらない。
「お前か、玲音って。……結構イイ男だな」
「……どうも」
野瀬さんの言葉に、玲音は眉間にシワを寄せて困ったような表情を浮かべている。
「こんなにイイ男なら、杏実が好きになったのも納得はいくな」
野瀬さんの言葉は、褒め言葉なのかもしれないとは思った。……でもそこにわたしは、ほんの少しだけ野瀬さんの玲音に対する【怒り】みたいなのを感じた。
「お前は妻子がいるにも関わらず、杏実をセフレにしてたんだろ?……どうだった、杏実とのセックスは?気持ちよかったのか?」
「………」
野瀬さんの問いかけに、玲音はわたしたちを見つめたまま答えようとはしなかった。
「……どっちだったにしろ、お前は杏実のこと傷付けたことに変わりはない。 俺はそんな杏実を傷付けたお前を、絶対に許さないからな」
その言葉に俯く玲音の左手の薬指にちらっと視線を向けてみると、玲音の左手の薬指に嵌めてあったはずの結婚指輪が、そこには付いてなかったーーー。
「……本当にごめん、杏実」
あれ……。玲音の結婚指輪が……付いてない。
なんでだろ……。いつも付けてたのに。
「ねえ、結婚指輪は……?」