【完結】余計な愛はいらない。


「颯人……さん……」

「杏実……っ」

 わたしはその日、自分から抱いてほしいと野瀬さんにすがった。
 玲音との思い出だけじゃなくて、玲音との記憶も全部、野瀬さんで上書きしてほしくてーーー。

「颯人さん……キスして」

 野瀬さんの首に手を回してそうねだると、野瀬さんは深く深くキスをしてくれた。
 野瀬さんとのキスは、いつも蕩けそうになる。そして甘くて色っぽくて、自分の理性をすぐに飛ばしてしまいそうになる。

 そんな野瀬さんの全てに、わたしは愛してほしいと思った。
 野瀬さんにだけ愛されれば、それだけでいい。他には何もいらないって。……野瀬さんはそう思わせてくれたから。

「あぁっ……っ」

 いつの間にか快楽の海へ沈んでしまったわたしたちは、その快楽に呑み込まれたのだった。

「杏実……好きだ」

「颯人さん……わたしも、大好きっ……」

 わたしにはこの人しかいない。わたしにはもう、野瀬さんしかいらない。
 野瀬さんからもらう愛以外は、何もいらない。

「杏実っ……っ」

「颯人さっ……っ」

 わたしたちは気付いたら、お互いに深い快楽へと堕ちていっていたーーー。
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