【完結】余計な愛はいらない。


 家に帰るといつも、虚しい気持ちになる。わたしはいつも一人で寂しくなる。

「杏実、また連絡する」

「ねえ、玲音。わたしたまにはデートがしたい」

 その日の帰り際、玲音にそう告げた。

「俺たちはセフレだろ? デートなんてする必要あるか?」

 だけど玲音の答えは、わたしの予想していたものとは少し違っていた。
 送ってくからと言われた時は嬉しかった。でも玲音は、手を繋いだりはしてくれない。

 わたしが手を握ると、それを拒否される。そんな悲しいこと、ない。
 わたしは玲音にとっては、ただのセフレでしかないんだ。だけどわたしを抱いたその体で、玲音は奥さんを抱いている。
 
 そして奥さんを抱いたその体で、今度はわたしを抱くんだ。 いつも感じる、玲音のシャツからふわっと香る柔軟剤の香り。
 奥さんの好みなんだろうなって、そう思う。玲音もこの香りが好きなのかな、なんて思ってしまう。

「ねえ、もう一度キスして」

「……ごめん。それは出来ない」

 わたしを抱く時以外は、絶対にキスはしてくれないんだ。
 どうしてなのか分からない。
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