【完結】余計な愛はいらない。


「どうして? キスしてほしいの」

 そうやって顔を寄せると、玲音は【ごめん】と言ってわたしから咄嗟に離れた。
 わたしは思わず、そう呟いた。

「……なんで、なんでダメなの」

 どうしてわたしじゃダメなの? そんなことばかり考えてしまう。
 
「杏実、俺は杏実のことを幸せにしてやれない。……本当にごめん」

「キスしてくれるだけで、いいから。 ね、お願い」

 そう言って玲音に抱きつくけど、すぐに離される。
 そして玲音は「俺と杏実は、体だけの関係だろ。……頼むからそれ以上、何も望むな」と言って背を向けて歩き出した。
 
「なんで……っ」

 イケない関係だということは、分かっている。所詮わたしたちは体だけの関係でしかない。
 こんなに好きなのに、体だけしか愛されない。そう思うだけでしんどいし、とても辛い。

 体だけじゃなくて、心までも愛されたい。 わたしの全てを見てほしい。
 そんなことを思うたびに、胸の奥がチクリと痛くて、ズキズキする。

「っ……玲音、玲音……」

 わたしはこんなにも、玲音のことを愛しているのに……。
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