嘘が溶かした最後の純情

いつもの朝

藍side



________ピピピピっ



「…ぅんー、っ、ふぁーぁ、…あさかぁ、」



スマホの電子音で目を開けた俺は、
まだ眠ったまんまの頭をどうにか働かせて身体を伸ばした。



そのままぽわぽわ…しばらくぼーっとしているとブルブル身震いが。



…うぅ、さむっ、



今は10月。季節はすっかり秋。
流石にパンツ一枚じゃ寒いはずだよ。


最近までまだまだ暑かったのに季節の変わり目ですねぇ。
風邪ひかねぇーようにしないと。


億劫な身体を起こして

クローゼットから適当に洋服を見繕って身に纏った。


散乱してたはずの抜け殻が床に落ちないってことは、
彼女が朝早くから洗濯してくれたんだろう。



__________ガラガラっ



あーやっぱり。笑
無理しなくていいっていつも言ってるのになぁ。


少しの歪みもなくキッチリ丁寧に干された洗濯物。


彼女の性格が出てるその干し方に思わず笑みが溢れた。



…あぁ俺って幸せだぁ。



それにしても雲一つないいい天気!

うん、空は快晴!!心も快晴!!



_____クンクン


庭から香っていた金木犀の香りがだいぶ薄れてきて、冬の訪れを感じさせた。


窓を閉めて、

机に用意されてあったサンドイッチと果物を食べて、

マスクをつけて帽子を深くかぶると、



スマホが出発だと時間を知らせる。



じゃ、香澄藍(かすみらん)今日も元気に行ってきまーす。




1階に降りるとマンション前に横付けされた黒いワゴンに乗り込む。



「はよー」


?「お前朝からうるせぇ」


すごい顔で睨んでくるこいつは 深瀬萩斗(ふかせしゅうと)

ん?俺そんな大きな声出してねぇーんだけど?笑


この子は相変わらず朝弱いのねぇ。



「藍くんおはよう」


「はよ〜桃哉(とうや)なぁに食べてんの!」


佐野桃哉「フルーツサンド。ひとくちいる?」

フルーツサンド!?
若い子は朝から食うもん洒落てんのねぇ。


「うんん、おれ最高の朝飯食ってきたらいいや、ありがとう」


優しい最年少くんの提案は丁重にお断りして空いていた彼の隣に腰掛ようとうとすると、背中からヤジが飛んでくる…


?「はいはい朝からごちそうさま。」


鬱陶しそうに立花葵(たちばなあおい)が言うと


隣に座る北内璃翔(きたうちりと)まで「僕もうお腹いっぱいでーす」なんてそれに続く。


「ん?なにが?笑」


璃翔「その白々しい顔うっぜぇ。早く座れ!」


出発できねぇーだろーがってひっどいなぁ。
座ろうとしたのに止めたのお前だよ。


マネ「藍早く座る。今日の予定確認するよ〜」

今日も忙しいからな。なんてマネの言葉にツッコム間も与えてもらず大人しく座る俺。

そんな俺を見て嬉しそうに笑う璃翔を注意しながらマネは淡々とスケジュールを言い渡す。


葵「はーどっすねぇー。」

『忙しいのはありがたいねぇ。』

璃翔「求められてますねぇ」

桃哉「うれてますねぇ。」

萩斗「いや自分で言うなよ」

萩斗の言うとおり自分で言うなよなんだけど、自分で言っちゃうぐらい、俺ら今きてます。

何を隠そう俺たち今をときめく5人組スーパーアイドルです。

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