ひまわりが枯れるとき、ライオンは…
コンコンッ

「失礼します。」

職員室に入ると、先生の横に1人の男子生徒が座っていた。

「おう、獅子谷、わざわざありがとうな。」

「いえ。」

その生徒は、俺をみて顔をこわばらせた。

「先生、なんで獅子谷なんだよ?無理だよ。怖いよ。」

「ごちゃごちゃいうな。留年したくないだろ?」

「そうだけど…。」

俺が嫌? ダメだ、状況が全く掴めない。

「先生、俺はなんで呼ばれたんでしょうか?」

「あ、悪りぃ悪りぃ。今から説明するから、まぁ座れ。」

「失礼します。」

「獅子谷、この学校の学習の制度知ってるか?」

「知らないです。」

「校長の意向でな、勉強が苦手な生徒に得意な生徒が教えるって制度があるんだ。教え合うことで、さらに理解が深まるってことでよ。」

「…はぁ。」

「それでな、こいつ1年の中村なんだけどな、英語の成績があんまり良くなくてよ。」

「…まさか。」

「そう、そのまさか。中村に英語教えてやって欲しいんだ。獅子谷、英語の成績いいだろ?もちろん塾講師みたいなものだから、小遣い稼げるぞ。」

教えるくらいなら、引き受けてもいいんだけど…、

中村くんから、断ってくれという目線を感じる…。

「でも、俺に教えられるかどうか…中村くんがその…どの程度かも知らないですし…。」

「中村、前期中間の点数は?」

「コミュ英2点、英表5点。」
(※コミュ英=コミュニケーション英語、英表=英語表現)

…まじか。

「期末は?」

「コミュ英1点、英表0点。」

これは、かなりの重症だ。

「あの、もしよらしければ答案を見せてもらえませんか?」

「いいぞ。ほらよ。」

「ちょっと、先生!勝手に渡さないでよ!」

「つべこべ言わない。」

テストの答案を見る限り、選択問題が1問あってるだけ。

適当に記入してるっぽいから、この正解はまぐれだろう。

基本から、学び直す必要があるな。

…あの時の俺と一緒だ。

「中村くん。」

「な、なんだよ。」

「1時間だけ、俺に教えさせてくれないかな?」

「…え。」

「それで合わないなって思ったら、他の人を探してもらう。これでどうかな?」

「い、1時間だけな?」
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