ひまわりが枯れるとき、ライオンは…
お面屋に着くと、その隅に見たことのある女子がいた。



檜山さんだ。



白地に水色の花模様の浴衣を着ている。

なんで1人でいるんだろう。

少し気になった。

「へい、いらっしゃい!いっぱいお面あるよ!どれがほしい?」
 
店を覗くと店主に声をかけられた。

「…えっと、少し悩みます。」 

お面は、たくさんあった。

高野さんになんのお面が欲しいのかと聞いてみたが、俺のセンスに任せると言われてしまった。

俺にセンスなんてものはないし、これだけ種類があるとどれを選べばいいか全くわからない。


檜山さんに聞くか?


いや、嫌われてるし、やめておこう。

やっぱり、自分で考えるしかない。

「1人?」

お面に悩んでいると、檜山さんが声をかけてきた。

「…えっと。」

びっくりして、すぐに返事ができなかった。

「友達ときてはぐれたとか?」

「…まぁ、そんなとこ。」

「へー、友達いたんだ。」

檜山さんは、面と向かってなかなか鋭い言葉を使ってくる。

「まぁ、一応。あの、檜山さんは1人?」

「私も一緒、はぐれちゃったの。」

「…友達、探さなくていいの。」

「少し1人になりたかったの。」

「…そうなんだ。」

「陽葵李がいないのに楽しそうにしてるみんな見て、なんか私とは違うなって思って…。」

「…。」

「私は陽葵李がいないと楽しめないし、楽しくない。たしかにお店回ったり、浴衣も着たかったけど…陽葵李と一緒に別ところで花火を見た方が良かったんじゃないかって思ってる。陽葵李、花火大会大好きなのに…毎年一緒に行ってたのに…。」

「…2人で?」 

「うん。でも、最近は私に他の子と遊ぶように勧めてくるし、花火大会もみんなで行ってって…。

檜山さんは、高野さんが大好きなんだろう。

「…なんか、陽葵李がどんどん離れていっちゃう気がしてて…。」

そして、高野さんも檜山さんが大好きだ。

「…私、獅子谷になに話してるんだろう。」

檜山さんにも病気のことを伝えるべきなんだと思った。

このままだと、2人がすれ違ってしまうような気がした。

でも、それは高野さんが望んでいない。

俺は、高野さんとの約束を破れない。

俺には、何もできない。



「獅子谷、あんたお面買うの?高校生にもなって?」

「…え、あ、いや…買う。」

「幼稚ね。」

「…まぁ、そうなるね。」

「陽葵李と一緒。」

「…え。」

「あの子、去年、狐のお面を被ってみたいってずっと言ってたの。もう中3なんだからやめとけって私が言ったから結局買わなかったんだけど…。」

「…そうなんだ。」

「うん。陽葵李、少し子供っぽいところもあるから。」

「…少し、わかる。」

「え?」

「あ、いや、なんでもない。」






「「六花〜!!」」

何人かの女子が檜山さんを探していた。

「みんなだ……それじゃ。」



女子たちと再会して、檜山さんは去っていった。


檜山さんを見送った後、俺はお面と綿飴とりんご飴を購入した。



ー海人ごめん。ちょっと腹痛くなっちゃったから先帰る。



海人にはじめて嘘のメッセージを送った。

そして、俺は病院に向かった。
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