ひまわりが枯れるとき、ライオンは…
花火が終わると、花火を見てた人たちはみんな帰り、俺と高野さんだけが屋上に残っていた。

『綺麗だったね。』

「そうだね。」

『1番最後のすっごく大きかったね!』

「それ…見逃した。」

『なんで?』

「なんか、ボーとしてて。」

『えー、もったいない。』

本当の理由なんて、言えるわけがない。

『私ね1人で花火見るんだろうなって思ってたから、獅子谷くんが来てくれて嬉しかった。ありがとう。』

「お使いしただけで、あとは何にもしてないよ。」

『お使いもありがとうね。よく、私が狐のお面欲しいってわかったね。びっくりしちゃった。』

「…檜山さんが教えてくれたんだよ。」

『六花が?…獅子谷くん六花と会ったの?』

「うん。」

『そうだったんだ…流石六花、私のことよくわかってるな。』

「高野さんが語る浴衣さ、檜山さんがきてたのと似てるね。」

『これね…六花と一緒に買ったの。同じシリーズのやつでお花が違うだけだから結構似てると思う。』

「そうなんだ……檜山さん、高野さんに会いたがってたよ。一緒に花火見たかったんじゃないかな。」

『…私も、六花と一緒にいたかったよ。浴衣も一緒に着たかった。』

「それならー。」

『でもね、いいの。』

「…なんで、わからないよ。」

『もう少し、今まで通り六花とならよくしてたいの。病気のことバレちゃったら無理でしょ?』

「でも…。」

『なら、獅子谷くんが六花に言ったら?』

「え。」

『そんなに、六花に知らせた方がいいって思うなら言っちゃえばいいんじゃない?』

この人は何を言ってるんだ?

「…言わないよ。」

高野さんは本当によくわからない。

「高野さんが言わないで欲しいなら、言わない。」

『…やっぱり高野くんは優しいね。』

「それ、聞き飽きた。」

『だってそう思うんだもん。こんな秘密聞いて、人に言ったりとか同情とかしないでいてくれる人ってなかなかいないと思うんだ。』

そんなことないよ。高野さん。

『人がもうすぐ死ぬって知ったら、普通、同情したり、今日みたいな日は最後の思い出にって人集めたりすると思うんだよね…それか、無関心か。』

高野さん、人は人思いだから、もうすぐ死ぬって人に会った時に、気の毒に思わないことは難しいんだ。

『でも、獅子谷くんは違う。獅子谷くんは、同情しないで接してくれる。もうすぐ死ぬ私じゃなくて、今生きてる私と接してくれるの。そんな人、なかなかいないよ。』


それは、俺が死にたがりだからだよ。


高野さんが死なないと俺は死ねない。


だから、同情なんかしないんだ。


「高野さん、それはねー。」

『俺が死にたがりだから?』

「…え。」

『俺は高野さんが死なないと死ねないから同情なんてしない。って言おうとしたでしょ?』

「な、なんで…。」

『私、獅子谷くんのこと少しずつわかるようになってるのかも。』

「…俺は、高野さんのこと全然わからない。」

『そっか。』

そう言って高野さんは笑った。
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