ひまわりが枯れるとき、ライオンは…
「陽葵李ちゃん、入るよー。」

『はーい。』

「これ、獅子谷くんから陽葵李ちゃんに。」

獅子谷くんは、病室に来なくなった。

ノートは真美子さん経由で届くようになった。

『ありがとう、真美子さん。』

「獅子谷くんと喧嘩でもしたの?」

『…。』

「ごめん、余計なこと聞いちゃったかな?」

『あ、ううん、大丈夫。ちょっと、気まずくなってるのは本当だから。』

「私でよかったら話聞くから、いつでも話してね。」

『うん、ありがとう真美子さん…。』

「じゃあ、仕事戻るね。何かあったら呼んで。」

『はーい。』

獅子谷くんのノートが届いたらその日の分の勉強をする。

これが、日課になっていた。

『…相変わらずキレイだな。』

獅子谷くんのノートはキレイでわかりやすい。

お兄ちゃんのノートにそっくりだ。

これなら、短い時間で理解ができる。

授業に遅れることはない、安心だ。




あの日から獅子谷くんはメッセージを送っても、電話をかけても全部無視する。

それでも、ノートだけは毎日しっかり届けてくれる。

『…優しいなぁ。』


やっぱり、獅子谷くんとちゃんと話したい。


なんとかして、呼び出そう。




ー退院できるかわからなくなりました。どうしても、六花に渡したいものがあります。獅子谷くん、代わりに渡してもらいたいです。




これならきっと、獅子谷くんは来てくれるだろう。




だって、獅子谷くんは優しいから。
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