ひまわりが枯れるとき、ライオンは…
優へ

優を授かったとき、私はとても嬉しくて幸せでした。

あなたがお腹にいた時から、男の子でも女の子でも「優」っていう名前にしようと決めていました。

いっぱい、いっぱい考えて付けた名前です。

だから、名前の由来をちゃんとあなたに伝えられるように、忘れないようにこのメモを書いています。

優が大きくなったら、一緒にこの手紙を読んで、お母さんがどうして優と名付けたのかを知ってもらいたいです。

名前の意味を話す前に、優に謝らないといけませんね。

お父さん、いなくてごめんね。

そのせいで優にはいっぱい迷惑をかけると思います。

正直、あなたが生まれた家庭は裕福ではありません。

私がシングルマザーなので。

家族で旅行に行くとか、遊園地に行くとか、そういった楽しいことはあまりしてあげられないと思います。

私はあなたが生まれる前に、あなたのお父さんと離婚しました。

かっこ良くて、仕事もできる人でした。

結婚をしたときは、私はこれで幸せになれる。

幸せな家庭をつくるんだと思っていました。

でも、私はあなたのお父さんをよくわかっていませんでした。

ある日、お父さんの勤める会社が事業に失敗して、潰れかけました。

その日から、お父さんは溜め込んだストレスをお酒で発散し、私に暴力を振るうようになりました。

毎日、殴られました。

あなたがいるお腹も、何の躊躇もなく殴ってきました。

私は毎日辛くて泣いていました。

お父さんのことが好きだったから、すぐに元に戻ると期待をして、なかなか逃げられずにいました。

そんなとき、優が私のお腹を蹴りました。

そのときに、やっと私は目が覚めました。

この子は生きたがっている。

守らなきゃと思いました。

私はすぐにお父さんから逃げました。

お爺ちゃんも助けてくれて、私はお父さんと離婚することができました。

あの時逃げなかったら、優は生まれてこなかったかもしれないということをお医者様から聞きました。

優は覚えてないかもだけど、私はあなたを殺しかけました。

お医者様に言われたことを思い出すと、怖くて仕方がありません。

もっと、早く逃げるべきだったと後悔しない日はありません。

こんな、お母さんでごめんなさい。

何があっても、あなたを守ると誓います。

私が「優」に込めた意味はただ1つです。

優しい子になってほしい。

それだけです。

いっぱい考えた割には単純だし、少ないと思うかもしれません。

でも、これがいっぱい考えた結果です。

お父さんみたいに人を殴るのではなく、人に手の差し伸べてあげられる人になってほしいと思いました。

人の気持ちを考えられる人になってください。

あなたが人に優しくしただけ、他の人もあなたに優しくしてくれます。

そうすればきっと、あなたには素敵なことがたくさんあります。

優しさはお金では買えません。

お金にできないくらい、価値のあるものです。

もしつけた名前がその人に魔法をかけるのであれば、私からあなたに優しさの魔法をかけさせてください。

優、生まれてきてくれてありがとう。

私はあなたが大好きです。

絶対に守るからね。
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