オオカミな同僚は溺愛したくて堪らない
ひとりで飲むと言っていたから、一緒にいたくないのかもしれない。私と過ごすのは迷惑なのかもしれない。
だけど、渡すだけなら……届けるだけならいいのかな。
仕事も終わったし、雅紀が会社を出て帰ったところも確認してきた。だから今は家にいるはずだ。
私はどうしようかと数十分、ケーキの箱の前で考え込んでいた。
「よし、行こう」
このままでは、せっかく作ったケーキが勿体ないし、私ひとりで食べるのも虚しいだけ。
だから、雅紀の家に届けに行こうと立ち上がった時だった。
ピンポーン……。
軽快な音が部屋に響き、思わず肩がビクッと上がってしまう。
滅多に人が尋ねてくることなんてないのに、一体誰? 私は恐る恐るモニターを見た。
「えっ? 雅紀?」
どうしてここにいるの? 来るなんて一言も言っていなかった。
さっき会社で別れた時も、普通にお疲れ様と言って出ていった。なのに、なぜいきなり私の家に?
ひとりで過ごしたいのではなかったの?