ワンコ社長は小さな秘書を手放せない
確かに暇だよ。暇だけど、今夜からだとは思っていなかったから何も準備していない。
「明日は暇ですけど……」
「なら問題ないでしょ?」
問題なら大ありだ。私の心の準備ができていない。
だけど、こんなに嬉しそうにしている柊に、今日は無理ですと断ることはできなかった。
「……はい」
私は必死に今日何を持ってきていたか、カバンの中身を思い出す。
メイク道具はあるし、化粧品などはコンビニで買ってもいい。たぶん必要最低限なものは何とかなるはず。
だって、前日の夜から誘われるなんて、きっとそういうことだろう。
この流れで一度家に帰されて、明日また会うなんてことはしない。ふつうならこのままお泊まりの流れだ。
ドキドキするなという方がおかしい。
カチンと緊張で固まった身体のまま、自分のデスクでカバンを抱えて座り柊の仕事が終わるのを待った。