ワンコ社長は小さな秘書を手放せない


 そんなんじゃない。誰かじゃなくて柊のせいなのに――。


 分かってくれない柊に、私の想いが爆発した。



「なんでわからないんですか? 社長が……」


「うん? 僕が?」


「さっき、綺麗な女の人見てましたよね? 私みたいなチビじゃなくてとても綺麗な……あんな人なら隣にならんでもお似合いなんでしょうね」



 淡々と、それでも言葉は強くなってしまう。言いながら思い出すだけでも、寂しさと悔しさでいっぱいになる。



「社長は私なんかよりもああいう人がいいんですか?」


「……っ、これは……!」



 勢いで言ってしまったけれど、柊の反応が想像とは正反対だった。

 てっきり怒るとか否定するとかすると思っていたのに、何故か口元を手で押えながら顔を背けてプルプル震えている。


 そして次の瞬間、満面の笑みで私を見た。



「美桜ちゃんっ、それって嫉妬……だよね? うわぁ、美桜ちゃんが僕に嫉妬。嬉しすぎるっ」


「えっ?」


「どうしよう僕……、美桜ちゃん!」


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