ワンコ社長は小さな秘書を手放せない


 もう、語彙力がどこかに行ってしまっていた。私はぽかんとするしかない。


 こんな反応、全く予想できなかったのだから。



「僕には美桜ちゃんしかいないんだよ? 他の人なんて目に入らないくらいキミが好きなんだ」



 少し落ち着いてきた柊はそう言って、私をぎゅっと抱きしめた。

他の人には見せないとでも言うかのように、柊に包み込まれてしまう。その温もりがあたたかい。



「じゃあ、微笑んでいたのはどうしてですか?」



 私しか目に入っていないなら、見ていたのは女の人ではないということだろうか。


 どうしてあんな人の目がある場所で、嬉しそうに微笑んでしまったの?

 自分がイケメンで影響力があるのだと自覚していないのだろうか。



「あー……、あれはその――」


「言ってください!」



 誤魔化すことなんてさせないんだから。理由を聞かないと私の気がすまないし、抱きしめられただけではモヤモヤが取れない。

< 18 / 32 >

この作品をシェア

pagetop