ワンコ社長は小さな秘書を手放せない
もう、語彙力がどこかに行ってしまっていた。私はぽかんとするしかない。
こんな反応、全く予想できなかったのだから。
「僕には美桜ちゃんしかいないんだよ? 他の人なんて目に入らないくらいキミが好きなんだ」
少し落ち着いてきた柊はそう言って、私をぎゅっと抱きしめた。
他の人には見せないとでも言うかのように、柊に包み込まれてしまう。その温もりがあたたかい。
「じゃあ、微笑んでいたのはどうしてですか?」
私しか目に入っていないなら、見ていたのは女の人ではないということだろうか。
どうしてあんな人の目がある場所で、嬉しそうに微笑んでしまったの?
自分がイケメンで影響力があるのだと自覚していないのだろうか。
「あー……、あれはその――」
「言ってください!」
誤魔化すことなんてさせないんだから。理由を聞かないと私の気がすまないし、抱きしめられただけではモヤモヤが取れない。