ワンコ社長は小さな秘書を手放せない
とりあえず服には困らなくて良いそうなので、コンビニでメイク落としや化粧水を買う。
というよりも、私がお金を出す前に柊が買ってくれた。
「じゃあ帰ろうか」
私の手をつないで、マンションに入る。
エントランスはクリスマス仕様に少しだけ飾り付けされていた。
「そういえばお腹すいたよね? 遅くなっちゃってごめんね」
たしかに、仕事が終わってからすぐに出かけてしまったから、ご飯はまだだった。
だけど楽しさと興奮していたので、言われて初めて自分がお腹すいていたのだと自覚する。
「実はご飯用意してあるんだ」
「社長がつくったんですか!?」
仕事はできると思っていたけれど、まさか家事も完璧だったりする?
いつもお弁当は買ったものを食べているのを知っているけれど、夜ご飯までは知らない。
それだと、私の出る幕が完全になくなってしまう。
「ふふっ。まさか……料理は苦手だから注文したやつだよ」
その返事を聞いて、少し私はほっとした。