ワンコ社長は小さな秘書を手放せない
どれも美味しそうだけれど、色んな種類がありすぎて食べきれなさそう。とてもふたり分には見えない。
「残してもいいよ。明日も食べればいいし」
「そうですよね。私、これが食べたいです」
せっかくだから美味しくいただくことにしよう。全部気になっていたので、全て少ずつよそって食べた。
料理はどれも美味しいのだけれど、時間が経つにつれてこの後のことを考えてしまい、どうしても緊張してしまう。
初めてのお泊まりで、しかも柊の家。この流れで何もしないなんてことありえない。
考えるだけでも顔が暑くなってくる。
実は今まで、一度も手を出してこなかった柊。
本人も今日は手を出すつもりで私を呼んだのだろう。
さっきみたいに抱きしめたり、キスをしたりはあったけれど、まだ全てを経験した訳ではない。
全身がドクドクと脈打つのを感じる。
私はどんな顔をしていたらいい? どういう気持ちでいたらいい?
考えたいのに、いっぱいいっぱいで上手く思考が回らない。
「そろそろお風呂入る?」
「おっ、ふろ……さ、先どうぞ」
声がうわずってしまった。柊が入っている間に少しでも落ち着きたい。