ワンコ社長は小さな秘書を手放せない
「あの?」
これはどういう状況なのだろうか。柊に喜んでもらえたから、良かったということにする?
「美桜ちゃん、ちょっとこれ被って僕のこと見上げてみて?」
これというのは、服についているクマの耳がついたフードだ。
私は肉球の手袋をつけていて自力で被ることができないので、柊がはいっと被せてくれる。
この格好で柊を見上げるだけでいいんだよね。私はチラッと柊の顔を見た。
「こ、こうですか?」
「くっ……くそっ……可愛すぎて抑えが効かない。どうしてくれるんだ」
柊はひとりで何かと戦っていた。
どうしてくれると言われても困る。やれと言ったのは柊なのに。
私は恥ずかしいけれど柊に喜んで欲しいと思い、この状況を利用して自分から抱きついてみた。
多分、耳まで真っ赤になっているだろう。
私だって、ここまで来て何もないのは嫌だ。
このままだと、ただ私を愛でて終わりになってしまいそうだったので、自分から行動に移した。