パン職人の店長を、好きになりました。
庵さんがお店の方に行ったのを確認して、私は白いコックシャツにベージュのズボンに着替えるとオレンジ色のショートエプロンと同じ色のベレー帽をかぶると、急いでミルクを飲みお店の方へ向かった。
「店長……変わります」
「おう、お願い」
今はお客様は来ていないからゆっくりと、トングを受け取りパンをショーケースに一つずつ並べていく。
「今日も美味しそう」
「彩愛ちゃーん! そこのメモ見てね」
店長に名前を大きな声で呼ばれて、ショーケースに貼られている付箋を見ると【今日のパンは、チョコくるみベーグルとベリークリームチーズ、ドライトマトとバジル】と箇条書きだけど綺麗な字で三つ書かれていた。
内容を確認しホワイトボードに付箋の内容をペンで書いていると、カランカランと店のドアが開いた音がした。