パン職人の店長を、好きになりました。
「こんにちは、彩ちゃん」
「いらっしゃいませ、西村さん」
私を彩ちゃんと呼ぶ人は常連さんである西村さんとその旦那さんだけだ。
「今日もいつものパンくださいな……あとはねー」
「はい」
いつも買ってくださる食パンとレーズンパン、くるみパンをトレーへと入れて待つ。
「うーん……迷うわね、じゃあベリーとクリームチーズも追加して欲しいわ」
「はい、かしこまりました。袋詰めしますね」
紙袋を二枚取り出し袋詰めをしながら会計を出す。
「やりながらでも出来る様になったのね〜最初の頃は危なっかしいお嬢さんだったのに、今じゃ看板娘になって……」
「ありがとうございます、もう働きはじめて一年になりますしここの仕事好きなんです」
「ふふ、そうね。そうよね……私も彩ちゃんに会うの楽しみにしてるのよ。じゃあまた来るわね」
西本さんを出入り口まで案内し、ドアを開けて外に出てから袋を渡す。
「ありがとうございました。またお越しください」
「ええ、今度は主人と一緒にくるわ」
西本さんが帰っていくとまた次のお客さんがやってきた。