パン職人の店長を、好きになりました。
「それね、前に彩ちゃんがお弁当で持ってきたカボチャコロッケからアイデアもらったんだよ。」
「そうなんですか、役に立てられたなら嬉しいです」
「こちらこそだよ。でね真ん中がミルクティーパン」
ミルクティーが大好きな私はワクワクと胸を躍らせながら一口食べる。
「ほんとにミルクティーだ……すごい」
「良かった、中のクリームめちゃくちゃ頑張ったんだよ。そういえば、彩ちゃんは進路どうするの?」
進路……そういえば今日ホームルームでも担任が言っていたしちゃんと決めていかないと。
「お菓子とかパンとか作りたくて……専門学校に行こうかなって思っています」
それだけは決めていたことだ。もともとお菓子作りが好きだったこともあるが、店長のパンを作っているところを見ていて私もパンを作りたいと思った。
「そっか。なんか嬉しいよ、また決まったら教えて」
「はい、いつもありがとうございます」
「うん、気をつけて帰れよ」
店長は微笑むと私の頭をポンっと撫でると、また厨房へと行ってしまった。
店長が出て行った瞬間、私の心臓はドキドキと音を立てて顔も熱くなってきた気がする……あぁ、やっぱり私。
「支度しよ……帰らなきゃ」
私はユニホームを脱ぎ、制服に着替えると店長に声をかけてお店を後にした。
……私、やっぱり庵さんのこと好きだ。