僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
episode、8 ズレゆく愛
どうしてもできない事
《今、若者に大人気のロックバンドーーーーーのボーカルRYUさんに新恋人発覚のスクープが入りました――――…。
恋人らしき女性は―――、しかし以前に、ある男性との付き合いが噂されており—―—…そのS・Kさん(仮名)と一緒に知人が集まるクラブデートでキスを――・・・しかし、事務所からは、彼は同性愛者ではないと断言しており…》
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そんなニュースがワイドショーを騒がせたのは、俺があのマンションに住み始めて2年目のことだった。
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そのバンドボーカルのRYUは、いつかのライブハウスのバイトの時に大遅刻してきたやつで、思わずリモコンを持ったまま固まる。
”けいが放してくれなくてよ”って、あの時たしかに言ってた。
S・Kさんって
ケイのことだったりして
篠原慧・・・・。
あの頃はあり得ないと思ってたけど、あのイニシャルは仮名じゃないって思えてしまう。
「祐ちゃん、コーヒー出来た?」
「ん、どうぞ」
「わー、ありがとう!~~~ん~!やっぱり祐ちゃんの淹れてくれたコーヒーは絶品だね!」
ほのが可愛いから、ありがとうのキスをした。
そうすれば喜んで、カップを持ったまま隣に座ってと席を開けてくる。
「今日、紫音帰ってくるね。晩ごはん、どこかに食いに行く?」
「ううん、作るから。うちでまったりしよう。紫音君もそのほうが気が休まると思うよ」
「そうか…、んじゃあ、おれも手伝うよ」
「えー、それ本気?余計な仕事が増えそうなんですけど」
「ひっどいなー。少しは戦力になってるでしょ?」
「1ミリもなってないよ」
「…厳しいね」
「うそうそ、後で買い物付き合ってね」
「うん」
「祐くんの苦手な甘ーいケーキも、紫音君に焼いてあげようか?」
「俺は食べないけど、紫音が喜ぶね」
「さぁ、そうしたら早く行こう!スポンジを早いうちに焼いといて冷やさないと」
「ん、わかった。」
俺たちは三人での暮らしが当たり前になっていた。
この関係は極めて良好で、いいバランスに思える。
言い合いや意見の食い違いがあっても、第三者の目があるから長引くことはないし、誰かが仕事やプライベートで家を空ける時があっても、一人きりになる夜はほとんどなくて、本当に幸せで穏やかな世界だった。
ただ一つ、大きな問題があって、その問題はいつになっても解決することはなかった。