僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「おお――だいぶできてんな」
「っはー、ホントっすね」

とは言っても職人たちが組み上げた入口のモニュメントや、遠くからでも見えるメインステージの舞台を見ればテンションがあがってくる。


この感じは仕事って言うより、学校祭に近いと思う。


「遊びじゃねーんだぞー、気を引き締めろよ」
「うーっす」

主任のお叱りを受けながらも、これからのことを思えば、少しだけ浮足立つ。
大きなものを作るこの一体感と充実感は、何事にも代え難い。

慌ただしいし、炎天下だし、意外と力仕事もあってへとへとになるけど

人が熱狂したり熱くなれる場所を作れる喜び。

それが俺の心を満たしてくれるんだ。

そんな感情溢れる人たちに触れられるこの仕事が大好きだった。


会場に着いて、現地スタッフと軽く挨拶を交わして、設営職人や照明スタッフにも挨拶に回る。

それから、打ち合わせや進行状況の確認、安全面での不備がないかを現地スタッフと何度も何度もチェックする。


一日目は嵐のように時間が過ぎてすぐに夜がきた。


俺クラスの社員にホテルなんて用意されているはずもなく、プレハブやバスで雑魚寝を決め込む。

でも、俺としてはそっちのほうが楽しかったりするけど。

一人で寂しくないかって紫音から連絡来たけど、この状況を茶化して伝えた。


「んだよ、島ぁ!スマホ見てニヤこきやがって」
「っわ、びっくりしたー」
「彼女か?」

ホントは紫音だったけど、説明が面倒だからそういう事にしとく。


「ん、まあ、そんなところです」

「いいなー、初日でそうやって心配してくれるんだな。うちの嫁ちゃんなんてほったらかしだぞ」


何ていっても新婚な先輩。
俺にとっては十分そっちのほうが羨ましすぎる。

法的にも、親や親族からも認められるって、凄いことだと思う。

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