僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
開場して数時間が経ったころ、一つの連絡が入った。
”立ち入り禁止区域に学生男子数名が入って騒いでいる”と
これは一大事だ。
あそこは、古い時代に作られた木製の遊具が立ち並んでいて、もともと使用禁止になってるんだ。
近々に撤去する予定はあるけども、くれぐれも人を入れないようにとの通達があった場所なのに…。
「すいません!!どこかに入れる場所があったみたいで…」
「そうですか、でも危険区域っていうのはしつこいくらい張り紙してますから、貴方は悪くありませんよ、大丈夫です」
慌てふためくボランティアスタッフを宥めて、とりあえず事故が起こる前にと捜索増員の要請をした。
中へ入って行けば、姿は見えなくとも怒号のような声が聞こえてくる。
近くのステージが音出ししていなくて助かった。
「あらら・・・」
「やばい!溺れたら大変だ!」
あろうことか、本人たちはキャッキャと沼に友達を落として遊んでる。
その、何十年も掃除されていない小池はヘドロが溜まっているであろう色をしてる。
足を取られて、溺れたら大変だ。
「今行くぞ!待ってろよ!」
ずぶずぶと池に入って何とかその子を救助し、その子を含めた数人を、規則に従い退場してもらうことにする。
「君ら、悪いけど強制退場だからね。危険区域なのは知ってて入ったんだよね?」
「ええ!!マジかおっさん!金払ってんだけど!」
「そうだぞ!警備員立てとけや!そんなの知らねーし」
人気のないところから入ったくせに、聞いて呆れる。
ここが危険区域で入ってはいけないと十分すぎるほど警告しているんだ。
それを越えていっただろう彼らに酌量の余地はない。
「悪いけど、このイベントの方針なんだ。意義があるなら親御さんたちに連絡させてもらうけど、いいかい?」
手首のリング色が学割であるとともに、未成年を示す判も押されてる。
すなわち、チケットを買った時に必要な保護者の連絡先をこちらで把握している形になる。
粋がっていた彼らも、親に連絡されたら嫌なのか、文句を言いつつ去っていく決意をしたみたいだ。
「ちぇ!ジジイ!うっぜーな!」
「帰るベ帰るべ、―――島崎さんね、SNSに流すから」
「・・・・・・・・・・・」
やれるものならやればいい。
俺は間違ったことはしていない。
もし、未成年者の故意的な事故なんて起こしてしまったら、来年も継続してこのイベントが出来なくなってしまうんだ。
そんな事になってはいけない
地元の人らは勿論、これに携わる人たちの沢山の想いがここにあるのだから。
このイベントを未来に繋げていくためには必要なことだった。