僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~

騒ぎはとりあえず収まったけど、俺の服や靴がとんでもないことになっていた。

「げー・・・」

「あー島ぁ、そんなのだめだ、休憩がてら俺の部屋貸してやるから身体洗ってこいや」


主任のお言葉に甘えてビジネスホテルのカギを受け取った。

トイレで着替えを済ませてホテルへと向かう。


「あー、初日からついてねーな」
シャワーを浴びながらつぶやく。

小さい部屋だけど、主任クラスならこんないいところに泊まれるんだな。

さっさと済ませて、スタッフTシャツをコインランドリーで乾かすあいだ、近くのソバ屋でご飯も済ます。


ちゃんと食えって言われてたのに、ここに来てから不規則になってた。


「やっべ、もう行かないと」

食べ終わってから外に出ると、さっきのホテルから人が出てきた。

出待ちの子が騒いでいるから、フェスの出演者かもしれないと目を向ければ、先日ポスターで確認したバンドだった。

「おッ疲れー、島ぁ!初日から大変だったな!」

痛いくらいにバンバンと主任に肩を叩かれる。


「今日、どこで寝るんだ?」

「テント張りましたから、そこでひっそりと寝ます」

「大丈夫か?なんだったら俺の部屋で寝るか?」

「いいーっすよ、そっちのほうが危ないっぽいですし」

「んだとこのやろ!」


主任はヘッドロックをかけてくるけど、ちゃんと手加減してくれる。
俺が女だって知ってるからだ。

身体が女で心は男。

でも、恋愛対象に男も入ることを知ってる人は会社にはいない。

軽くスタッフ同士で初日の打ち上げした後、明日の開演スケジュールや今日の反省会などをして解散。

他の人と雑魚寝もいいけど、ゆっくりできないから持参したテントを張った場所に戻る。



会場内はまだ騒がしく、あちこちで酒を酌み交わしていた。



「祐ちゃん」
割と静かになったところまできて、そう呼ばれる。

俺のことをそう呼ぶのは、二人だけ。

ほのと、もうひとり・・


相変わらず線の細い顔が暗い照明の中で映えて見える。

「・・・・ケイ」
「久しぶり」
「・・・・うん、久しぶり」

「少し、話さない?久々だし」

「うん、いいよ」

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