僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
何もかもがどうでも良くなっていた。

もう、どうでもいい。大学も行かないで実家に甘えるだけのクズにでもなろうか?

母さんと父さんに、”なんでちゃんと生んでくれなかったんだよ”とか言って親のせいにしてさ。

なんて考えて、自分の弱さに乾いた笑いが込み上げる。


そんな堕落しきった生活をしていたら、幼馴染の上条晴秋に怒られた。

どかどかと階段を上がってくる足音が聞こえたと思ったら、ドアが開くと同時に怒号が響き渡る。

「失恋したのかなんか知んねーけどよ!だからって落ち込みすぎだろうが!」

元気だな、ハルは。

そして、こっちの事情なんて知りもしないのに、凄く無神経だ。

「人生まで、棒に振る気かよ!」


だって、本当の性を隠しながら、どの世界で生きていけばいいんだよ。

窮屈な世界で、自分の正体を隠しながら生きる。

なんか、それが凄く怖かった。



「何もしたくないんだ。ほっといて」

「何もしたくないって、もう随分時間が経っただろ?頭切り替えろよ」

「・・・・・・」

ハルの前向きな考え方についていけない。


「せめて、ちゃんと飯食えよ。そんなに痩せちまってよ」
「でも、食いたくないんだ」
「おばさん心配してたぞ」
「・・・・・・・・・・・」

ハルは何を言っても無駄だと思ったのか、ため息交じりにその場に座り込んだ。

「進路希望書も真っ白だったって聞いたぞ。前に東南アジアのほうの言葉勉強してただろ?」
「もう、必要ないんだよ」
「へっ、男に振られて人生も変わるのか。お気楽だな」
「そんな言い方しなくてもいいだろ?」

でも、分かってる。
ハルはいつも、こんなやり方しか出来ないけど、凄く心配してくれてるって。


「おばさん連れてきた。ごはん用意して」

その言いように、あんたはここの家の人かって心の中でツッこむ。
結局ハルのしつこさに根負けして下に降りてきた。



「ありがとうねー、晴君!!」

これで、母さんの中で、ハルの株がまた上がったな。
「祐子、ちゃんとご飯食べないと。これから大変な時期になるんだから」

受験――――ね。卒業後に女用の服着て働くよりかはそっちの方がいいように思える。
動機が不純だけどね。

「おばさん、これからの進路のことはまだまだ時間があるし、もうちょっと見守りましょ?ね」

「まあ、そうね・・・」

「大学受験したかったら、勉強に付き合うよ?だからゆっくり考えな?」
「うん・・・」

うちらのやり取りを聞いて、母さんはそれから口うるさく言ってくることはなくなった。
この時ばかりは、ハルに感謝した。


そうして、少しづつだけど、食欲も戻って、学校にまた行き始めたんだ。

時々ケイを見かけて、胸が苦しくなった。

すれ違ってもケイは何も言ってくれない。


もう、ケイは新しい恋人と先に進んでいる。

俺とのことは過去のことなんだって、自分に言い聞かせるけど、深い悲しみはいつまでも俺の中に居座っていた。

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