僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
詩安はここでも人気があるみたいで、指名が絶えない。
かといって過剰な業務は押し付けられない。
閉店時間の30分前には、閉店の札がかけられ、入店しても明日来てって断るらしい。
そう言われて不満を漏らす人がいないのが不思議だった。
その働いている店に赴けば、最後の一人を仕上げている途中だった。
「あ、島くん、もうちょっと待っててね」
「はい」
アップルに悪さしないでよと目で訴えてから、いつものところにハーネスをかちりと止めた。
俺は素人だし戦力にならないから、せめてもと掃除や洗濯なんかの閉店作業を手伝う。
「———siーma!~~^_^…~ww!」
いまいち何言ってるか分からないけど、ここの先生がありがとうって言ってる雰囲気は伝わる。
「ちょっときて、島くん」
「うん?」
「この人ね、俺の常連のマールさん。島くんがおれの好きな人って言ったら喜んでさ」
「———アハハ、そうなの?」
この人は惜しげもなくこんなことをお客さんと話してるんだ。
マールさんは俺たちの肩を叩いてニコニコしてた。
「お似合いだって」
照れくさくなるけど、素直に嬉しかった。
どう見ても男と男なのに、こんなところでも日本とだいぶ違う。
マールさんを見送ったあと、最後はぞうきんを固く絞ってドアや窓を拭いていった。
詩安や先生ははさみを研いだり、道具を洗浄したりして片付けていた。
「アップル、お待たせ」
「にやぁ~」
「いい子にしてたか~~?」
詩安が髭を擦り付けるとアップルは嫌がって俺のほうに逃げてくる。
俺とおそろいにしたいって最近伸ばしてるんだ
「なんだよ、つれないな~」
言いながら俺の手を繋いでほっぺに軽くキスしてきた。
こういう不意打ちキスも慣れっこになってきた。
最初は恥ずかしかったけど、今じゃ普通にそのキスを受け止めている。