僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~

「日本のお店と比べたら、仕事終わるの早いよね」

「うん、これが日本に帰りたくない最大の理由かも」

「うん、本当だ。あの国は働きすぎだ」


詩安は先生の祖父母が住んでいたというマンションの五階の部屋に住んでいる。

建物もだいぶ古いけど、それがこっちでは価値があるみたいだ。

リビングキッチンの他に個室が二つあるけど、ここ最近はほとんど一つしか使っていない。


料理が出来ない俺は詩安に教わりながら一緒に夕食を作る。


「これ、三センチにカットしてオリーブで炒めて」

「はーい」

詩安は俺の隣で鶏もも肉を手際よく切り分けていく。

紫音と穂香から聞いているのか、俺に包丁を持たせるときは慎重に見守っていた。


ちょいちょいよそ見するからそっちの方が心配になるんですけど…

俺だってさ、少しは出来るのに。

「炒めたよ」

「じゃあ、皿にうつしてさ、コーヒー淹れてよ」

「うん」


豆を挽いてドリップしてると後ろからじゃれてくる詩安。

「もう、危ないよ」

「ちょっとだけいいじゃん、今日頑張ったもんおれ」


俺のうなじや首筋にキスをしてきた。


「ん、肉焦げないの?蓋はしなくていいの?」

「いいのいいの、ここらのことわざでね”コックは料理するときに蓋をしない”って言われてるんだよ」



俺の肩に顎を乗せて話すからその息遣いも振動も伝わってくる。


凄くくすぐったい・・・

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