僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
自分らしくあるために、自分が何者かを知る
仕事を始めたレストランではオーナーも従業員も日本人は居なくて、イタリア風になった日本料理を中心としたレシピだった。
オーナーはアジア系の人。
詩安のお客さんということもあって、手取り足取り、お互いつたない英語で会話しながら教えてくれる。
基本俺はできた食事を、自転車に連結させたサイクルトレーラーで運ぶデリバリー役。
この国は自転車専用の道路が充実しているから、日本のように危険な目に合うことは滅多にない。
急に入る注文もあるけど、ほとんどは会社や顧客中心に月契約している人たちが中心で、週ごとにスケージュールは決まっていた。
時間も混みあう11時から15時までの仕事。
立て込むときもあるけど、基本そんなにも忙しい仕事じゃなかった
「———~~~」
にこやかに渡せば相手の顔も少し緩くなる。
ここの人は感情がストレートで日本人みたいに愛想笑いがない。
最初は怒っているのか心配だったけど、それが普通みたいだ。
だから、嬉しそうに笑ってくれるときは、嘘がないから嬉しかった。
俺ってやっぱり人の笑顔を見るのが好きなんだな。
日本にいた時はちょっとそうかなって思っていたけど、ここに来てそれを強く再認識する。
大学生時代もその後の就職も、イベント業についていたってことは、そういうことだったんだ。
最初に出たわずかな収入から詩安と食べるデザートを買うことにした。
残りのお金は生活費に回す。
彼に愛されているからと言ってどっぷりと甘えてはいけない。
ラズベリー仕立てのスフレがのったショコラケーキと、綺麗にかたどられたホイップクリームにココアパウダーふりかけてあるシュークリーム。
喜ぶ顔を想像しながら袋を受け取り家に帰る。
「やった!島くん!ありがとう」
「ちょっとまって。パスタ食べてからだよ」
「ちぇー・・」
いまにも食べてしまいそうな詩安を軽くあしらって、珍しく俺が最後まで作れたパスタを二人で食べた。
「うん、うまい――上手になったね」
「ここに来て詩安が教えてくれるから、だいぶ身についてきたよ」
「嬉しい事言うよね。調子にのって太りそう」
「気になるなら朝一緒に走ろうよ」
「うん―――そうだね。走って身体締めたい。最近また太ってきたから」
「そう?気にならないよ?」
「いやいや、気を抜いたらダメなんだ。MAX太ってた時の写真みたら島くん幻滅するかもよ」
「しないですよ」
「言い切れる?」
「はい」
「じゃあ、今度日本に帰った時にでも見せてあげるよ」
食後はデザートを出して選んでもらったら、やっぱりポイップたっぷりのシュークリームを選んでいた。