僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
久々に帰った日本は、俺がいる北部のイタリアより暖かくて、着てきたジャケットを一枚脱ぐ。
俺が望む世界への第一歩、まずは実家に帰る。
いつもみたいに夜コソコソと帰るのではなく、白昼堂々と明るい時間にありのままの姿で。
俺だけの問題じゃないから一応両親に了解を取ったら、答えは前と変わっていなかった。
「こんにちは!」
「・・・・・」「・・・・」「・・・・・」
近所の顔なじみでもある、幼馴染の親たちは雑談をやめて俺を不思議な目で見ていた。
「分かりますか?———島崎祐子です。お久しぶりです」
一瞬だけざわついて下を向きかけるけど、ここではひけない。
何とか持ちこたえ、よく知った顔をもう一度見つめなおしていた。
「・・・祐子ちゃん?―――あらぁ、本当だ!久しぶり!!いやぁ、すっかり変わったから分かんなかったわ~~」
「あら!何の冗談かと思ったら、本当だ祐ちゃんだ!いや~いつぶりかなぁ?私さぁ中学生くらいの祐ちゃんしか見てないわ――」
おれが長年恐れていた反応じゃなくて、久々に顔を合わせた俺を懐かしむようだった。
心の中ではどう思っているか分からないけど、取り合えずよかった。
「今どこにいるの?」
「イタリアに居るんです」
「まぁ――凄いわねぇ」
「凄いのはパートナーの男性で、”俺”はそうじゃないんですよ」
「———そうなの?でも立派よ~~。ねぇ?」
「うんうん、本当だぁ」
「あ!分かった。晴君の結婚式で帰って来たんでしょ?」
「はい、そうです。それとちょっと用意したい書類もあったので―…」
***
「ただいまー」
「——おかえり、祐」