僕らの恋愛事情【完】 ~S・S更新中~
「母さん、ごめんね。外で井戸端会議してたマダムたちに、思いっきり俺の内面について暴露しちゃったよ」
「もう、いいんだってば。それで態度を変える人たちだったらこっちが願い下げだわ。いい機会よ。祐は気にすることなく帰って来てもいいって言ってるじゃないの」
母さんは強いな
俺はそれを気にして数年コソコソと実家に帰っていたのに
「それにね、お父さんが定年迎えたら香川の実家に帰りたいようなことも言っての。ここに居るのもあと数年よ。だから、ここよりは祐も帰りやすいだろうから、来れたら来てね」
「うん。・・・そっか、こっちの爺さんと婆さんも、もう居ないしね」
「そうよ。それより―――、大丈夫だった?祐子がこわかったんじゃない?」
怖くないって言ったら嘘になるけど、———俺は”彼”と堂々とここを歩ける未来が欲しかった。
それに俺も、いつか日本に帰って来てもここには帰ってこない。
詩安の望む場所に一緒に行くから度胸をつけたかったんだ。
「ううん、大丈夫。——コーヒー淹れるよ、飲むでしょ?」
「うん、祐子のコーヒー久々ね」
料理が苦手な俺だけど、これだけは上手なんだ。
詩安も———紫音も穂香も、ケイも・・・
俺が淹れたコーヒーを美味しそうに飲んでくれていた。
「あーおいし、なんでだろうね?祐子は昔からこれだけは上手よね」
反論したいけど、その通りだから何も言えない。
曖昧に笑ってごまかす。
「なんか、いい顔しているわね―――いい人いるの?」
「うん、正解。父さんが帰ったら話すね」
「―――うん」
母さんはそれからも穏やかな表情を浮かべながら、コーヒーカップを口へとよせていた。